身寄りなしのおひとりさまが死亡した場合、財産はどうなるのか解説

身寄りなしのおひとりさまが死亡した場合、財産はどうなるのか解説

「身寄りがないおひとりさまだけど、自分の死後に財産はどうなるんだろう」

このように、自分が亡くなった後の財産はどうなってしまうのか考えている人もいるでしょう。

そこで本記事では、身寄りなしのおひとりさまが死亡したら財産はどうなるのかについて、下記の内容を中心にご紹介します。

POINT
  • 死亡後の財産の行方
  • 自分の死後に発生する問題
  • 残った財産に関する疑問

家族などの身寄りがなく、死亡後の財産に関する疑問がある方はぜひ最後までご一読ください。

なお「自分が亡くなった後の財産の使い道を指定したい」という方は、遺言書の作成や遺産寄付の検討など健康なうちにやっておいたほうがいいことがあります。詳しくは下記をご確認ください。

>>身寄りのない人が今から準備すべき3つのこと

身寄りなしの場合、死亡した人の財産は国庫に入る

民法959条「残余財産の国庫への帰属」*によると、身寄りがなく法定相続人がいない場合、死亡した人の財産は最終的には国へ帰属します。

法定相続人は、法的に亡くなった人の遺産を相続する権利を持つ人のことで、被相続人の配偶者や血縁関係にある子ども・両親などに限られます。


相続人になる可能性のある親族
  • 配偶者
  • 父母(子がいない場合。父母が死亡している場合は祖父母)
  • 兄弟姉妹(父母がいない場合。兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪)

身寄りのない場合は、法定相続人がいない可能性が高いので死亡時の財産は国庫に入ります。たとえ法定相続人がいても、相続放棄された場合は相続人不在になります。

*出典:民法|e-Gov法令検索

法定相続人でなくても特別縁故者なら相続可能

法定相続人がいなくても、特別縁故者がいれば遺産の相続ができます。

特別縁故者とは、故人に法定相続人がおらず特別に相続を受ける権利が発生した人のことです。特別縁故者の代表的な例としては、亡くなった人の内縁の配偶者や事実上の養子などが挙げられます。

ほかにも、被相続人の療養看護に特に尽力した親族や知人等も特別縁故者に該当する可能性があります。

身寄りなしでも遺言書を残して相続を行う方法がある

身寄りのない人でも遺言書を残しておけば、血縁関係のない他人にも遺産を譲れます。個人だけではなく、法人などの団体にも財産を譲ることが可能です。

仮に法定相続人がいる場合も、権利を尊重しつつ合法的に第三者へ遺産を渡すことができます。

遺言書を作成するには法的な決まりがあり、違反していると遺言は無効となります。死後、遺言書に不備が見つかり「希望どおり遺産を譲れなかった」ということのないように、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。

身寄りがない人の死亡後に起こる問題

身寄りがない人が亡くなった場合、下記のような問題が発生する可能性があります。

  • 孤独死して気づいてもらえない
  • 葬儀や遺品処理などが複雑で周りに迷惑をかける
  • 財産まわりの処理で知人や地域の人に手間をかける
  • 自分の財産が希望どおりに使われない

親族や血縁者が本当にいないのか調査する間、故人の葬儀や火葬はできません。遠い親戚まで連絡を取る必要があり、迷惑や手間をかけることになります。

調査の結果、親族や血縁者がいないとなると、友人や近所の人・大家さんが葬儀を執り行うこともあります。しかも葬儀費用は、遺産から支払われず友人たちの自腹で支払われることになります。

友人たちに迷惑をかけないため、財産管理等委任契約や後見人制度など事前の準備を考えてみてはどうでしょうか?

>>財産管理等委任契約を結ぶ
>>後見人制度を活用する

ほかにも、財産が国庫に入るなど自分が望まれない使われ方をする可能性があります。

遺言書の作成をすれば、自分が希望した第三者の個人や団体に財産を譲れます。財産の使い道に自分の希望があれば、遺言書を作成するのもおすすめです。

>>遺言書を作成する

身寄りのない人が今から準備すべき3つのこと

身寄りがないと財産を思った通りに使ってもらえないというわけではありません。自分の財産をできるだけ希望どおりに活用するために、いまから準備できることがあります。

できるだけ自分の希望を実現できるよう今から準備できることを3つ紹介します。

  • 財産管理等委任契約を結ぶ
  • 後見人制度を活用する
  • 遺言書を作成する

健康なうちに準備をしておくと安心です。1つずつ確認しましょう。

財産管理等委任契約を結ぶ

財産管理等委任契約とは、契約者が病気や怪我もしくは死亡したときに財産管理などに関する法律行為を第三者に委任する契約です。

契約内容によっては、財産管理にとどまらず、家の賃貸契約や入退院時の清算、福祉サービスなどの退所手続きなどもしてもらえます。

身寄りのない人は、財産管理等委任契約を結んでおくと死後必要な雑務を代行してもらえるので安心です。財産管理等委任契約は、友人など信頼できる第三者ならだれでも可能です。

しかし実際にはサポートしてくれる内容にも限界があり、契約を悪用した事件も発生しています。業務監督してくれる弁護士や行政書士など、第三者を交えて契約書を結んでおくと安心です。

後見人制度を活用する

身寄りのない人は後見人制度、そのなかでも任意後見人の活用がおすすめです。自分の判断力が低下したときにも第三者が契約内容にそって財産管理をしてくれるからです。

後見人制度には、任意後見人と法定後見人の2通りあります。

任意後見人は、心身ともに健康で判断能力がきちんとしている人が、今後いざというときのために契約内容を取り決めます。本人が財産を管理できなくなったときに、管理や手続きを代行してくれます。

一方で法定後見人は、本人が亡くなってからトラブルや問題を解消するために血縁や相続人が裁判所に申し立てを行い、管理やサポートできるようにする制度です。

親族がいない場合や親族に迷惑をかけないためには、健康なうちに自ら任意後見人をたてる必要があります。

任意後見人を選ぶことで、自分の認知力が落ちた場合や病気になったときもある程度安心です。

遺言書を作成する

身寄りのない人でも、遺言書で希望を記載すれば赤の他人に財産を譲ることができます。個人だけではなく慈善団体への寄付も可能です。これを遺贈寄付といいます。

遺贈寄付とは、社会貢献活動に役立てることなどを目的に、被相続人の遺産を遺言によって特定の団体(個人)にゆずることです。

遺言状を作成せず遺産を国に納めるよりも、活動内容に共感できる団体で有効活用してもらったほうが有意義だと感じる人もいるでしょう。

「自分の遺産を社会貢献のために活用したい」と思う人は遺贈寄付を検討してみるのも1つです。子どもの未来を守りたい、災害にあった人たちへ支援をしたいなど、あなたのお金と一緒に想いをこめて支援団体を選べます。

そのためにも、遺言書はしっかりと作成をしておきましょう。

「遺贈寄付について詳しく知りたい」「遺贈寄付のメリット・デメリットは?」と悩んでいる方は下記を参考にしてください。

身寄りがない人の財産についてよくある4つの疑問

身寄りがない人の財産についてよくある疑問を紹介します。

  • 身寄りのない人が死亡した場合の流れはどうなる?
  • 親族以外が相続人になることは可能?
  • 身寄りのない人が生前にやっておくべき事はある?
  • 身寄りのない人が死亡した後、持ち家はどうなる?

身寄りがない人が気になる疑問について、1つずつ説明します。

【疑問1】身寄りのない人が死亡した場合の流れはどうなる?

身寄りのない人が死亡した場合の流れは以下のようになります。

  1. 家庭裁判所に選任の申し立てをする
  2. 家庭裁判所が相続財産管理人を選任する
  3. 法定相続人がいないか調査
  4. 財産や債務の有無を調査
  5. 特別縁故者がいるか確認
  6. 相続人不在の場合、財産は国のものになる

身寄りのない人が死亡した場合、特別縁故者など財産を譲り受ける人もしくは検察官が相続財産管理人の選任を申し立てます。

身寄りがないと本人が思っている場合も、法定相続人が本当にいないか調査が入るので、財産が国庫に入るまで1年以上の年月がかかります。

【疑問2】親族以外が相続人になることは可能?

相続人になることは、親族や血縁者以外でも可能です。しかし、基本的に生前の準備が必要です。もし、親族以外の人を相続人にしたいと考えているなら遺言書作成がおすすめです。

相続する人は遺産を放棄する権利があります。遺言書を作成することを伝えておくと、遺贈寄付先の団体や個人を混乱させることなく済みます。

【疑問3】身寄りのない人が生前にやっておくべき事はある?

身寄りのない人が生前にやっておくべきことは意外にたくさんあります。終活を始めようと思っているものの、なにから始めたらいいのかわからないという人はぜひ参考にしてください。

  • エンディングノートの作成
  • 資産の見直し
  • 遺言書の作成
  • 断捨離の実施
  • 葬儀やお墓の準備
  • 医療・介護の準備
  • 住まいの見直し
  • 友人リストの作成
  • 譲りたい遺品を整理する
  • デジタル終活を行う

もしものときを考えるのは寂しいと思うかもしれませんが、残された人たちにとってはとても大切なことです。

生前にやっておくべきことをリスト化し、いつなにがあっても後悔しないような準備を整えておくと安心です。

>>【何から始める?】終活の「やることリスト10項目」を紹介

【疑問4】身寄りのない人が死亡した後、持ち家はどうなる?

身寄りのない人が死亡した後、なにも対策をしていない持ち家は国庫に入ります。ただし、遺言書の作成で他人への相続もできます。

持ち家は、所有権移転登記を申請して名義変更するなどの複雑な手続きが必要です。相続を希望する場合は、事前に相続相手と話し合い、さらに司法書士や行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。

死亡後の財産管理について考えてみませんか

身寄りのないおひとりさまの財産について解説しました。ここで、紹介した内容をまとめます。

  • 身寄りがない人が亡くなったら財産は国のものになる
  • 財産管理等委任契約や遺言状作成で遺産の相続先を指定できる
  • 自分の想いにあう非営利団体に寄付する「遺贈寄付」もおすすめ

なにもしなければ、財産はすべて国のものになります。

健康なうちに財産の管理を考えておくことで、遺産を自分の希望どおりに有効活用できます。元気なうちに、将来について考えてみるのもいいですね。

もし「社会をよくするために自分の財産を役立ててほしい」とお思いなら、慈善団体への遺産寄付をおすすめします。
「そもそも遺贈とは?」「遺贈寄付を受け入れている団体について知りたい」などは下記で解説しています。気になる方はぜひ以下をご一読ください!