近年、遺言によって社会貢献を行う「遺贈寄付」への関心が高まっています。
しかし、遺贈寄付を行う際には、‟遺留分”という制度について理解しておくことが重要です。
遺留分を侵害する遺贈をしてしまうと、後にトラブルに発展する可能性があります。以前は「遺留分減殺請求」という制度でしたが、平成30年の民法改正により「遺留分侵害額請求」という制度に変わりました。
この記事では、遺贈寄付の基礎知識に加え、遺留分侵害額請求と改正前の遺留分減殺請求との違いについても解説します。
なお、まずは遺贈寄付についてもっと知りたい!そんな方には、遺贈寄付に少しでも関心を持たれた方には、はじめの一歩として、遺贈寄付を行っている団体のパンフレット取り寄せをおすすめしています(無料)。
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遺贈寄付:相続人がいない方のための社会貢献
相続人がいないと判断された人の財産は、国庫に帰属することになります。
自分の財産が国庫に帰属してしまうのは、どこか寂しい気持ちになるかもしれません。
遺贈寄付とは、遺言によって財産の一部または全部を、特定の個人や団体(国、地方公共団体、公益法人など)に贈与することです。相続人がいない場合、あなたの想いを社会貢献につなげる有効な手段となります。
例えば、長年お世話になった地域社会への貢献や、病気の研究支援、恵まれない子どもたちの教育支援など、様々な形であなたの意思を未来へ託すことができます。
これは単なる財産の処分ではなく、あなたの人生をより意義深いものにする、尊い選択と言えるでしょう。
生涯をかけて築き上げた財産を、社会のために役立て、未来を明るく照らす。
遺贈寄付は、そんな希望に満ちた選択です。
遺贈の種類:あなたの想いに合った方法を選ぼう
遺贈には、主に2つの種類があります。
- 特定遺贈:特定の財産(自宅や車、貴金属など)を特定の個人や団体に贈与する方法です。
- 包括遺贈:特定の財産の指定なしに、財産の全部または一定割合を特定の個人や団体に贈与する方法です。
どの種類の遺贈を選ぶかで、寄付金の使用用途が変わってきます。
特定遺贈は、特定の財産を遺贈できるため、目的のために使ってもらいたい場合に適しています。例えば、「図書館の建設費用にあててほしい」といった具体的な希望がある場合です。
包括遺贈は、受遺団体に使い道の裁量を委ねたい場合に適しています。包括残余遺贈は、自分の生活資金を確保したうえで、残りの財産を寄付したい場合に有効です。
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、自分の希望に合った方法を選びましょう。
遺留分を理解し、トラブルを防ぐ
遺贈寄付は素晴らしい社会貢献の一つですが、遺留分を考慮せずに進めると、後々トラブルに発展する可能性があります。
遺留分とは、配偶者、子ども、そして両親に、法律上で最低限保障されている相続財産の割合のことです。兄弟姉妹は遺留分の対象として認められていません。遺言によってこの遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、侵害した受遺者(遺贈を受けた人や相続人)に対して金銭で損害賠償を請求できる権利です。侵害された遺留分相当額を金銭で請求します。これは、平成30年の民法改正によって導入された制度です。
改正前の制度「遺留分減殺請求」との違い
改正前の民法では、「遺留分減殺請求」という制度がありました。遺留分減殺請求は、遺留分を侵害する遺贈や贈与を無効にすることで遺留分を確保する制度、つまり、財産そのものの返還を求めるものでした。
これに対し、現行の遺留分侵害額請求は、金銭での賠償を求める制度です。遺贈や贈与を無効にするのではなく、その金銭的価値を賠償させる点が大きな違いです。
なぜ制度が変更されたのか?
制度変更の背景には、遺贈や贈与を受けた人がすでにその財産を処分してしまい財産そのものの返還が困難なケースや、不動産などの分割が難しい財産を巡ったトラブルが増えてきたことがあります。金銭での賠償であれば、こうしたケースでも遺留分をより確実に保護することができます。
遺贈寄付と遺留分の調整
遺贈寄付を行う際には、遺留分侵害額請求の可能性を考慮し、事前に適切な対策を講じることが重要です。
具体的な対策例は、以下のとおりです。
- 遺留分の割合を理解する:遺留分の割合は、関係性や相続人の人数によって2分の1~4分の1の間で設定されています。
- 相続人とよく話し合う:遺贈の内容について、相続人と事前に話し合い、理解を得ることが重要です。
- 専門家への相談:弁護士や司法書士などの専門家に相談し、遺留分を考慮した遺言作成のアドバイスを受けることが、トラブル回避の最善策と言えるでしょう。
これらのポイントを押さえることで、あなたの想いを社会貢献につなげつつ、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
遺贈寄付についてよくある質問
【疑問1】遺言書の作成方法は?
A. 遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。遺言書は内容や作成方法が間違っていると無効になることがあるため、専門家に依頼するのがおすすめです。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
>>遺言で寄付するには?遺贈寄付の準備に必要な基礎知識を解説
【疑問2】遺贈寄付はどうやって手続きする?
A. 遺贈寄付は、受遺団体が確定した後に弁護士や司法書などに遺言執行者になってもらい、遺言書を作成します。詳しくは、以下の記事で解説しています。
>>遺贈とは?贈与・相続との違いや手続きの流れ、注意点を解説!
【疑問3】遺贈寄付をすると節税になる?
A. 遺贈寄付をすることで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。具体的には、「公益社団法人等寄附金特別控除」という制度を利用することで、特定の公益法人などに遺贈した金額が相続税の課税対象から控除されます。
控除額は、相続財産の総額や相続人の数、寄付金額などによって異なります。
例えば、1億円の財産があり相続人がいない場合、基礎控除額は3,000万円です。7,000万円が課税対象となりますが、4,000万円を特定の公益法人などに遺贈寄付した場合、この4,000万円が控除され、課税対象は3,000万円まで減少します。これにより、数百万円単位で相続税額が軽減される可能性があります。
ただし、すべての控除の対象になるわけではなく、寄付先や手続きが法律の基準に適合している必要があります。
>>遺贈でかかる税金は5種類ある!相続税の非課税ケースや計算方法を解説
あなたの第一歩をサポート
「遺贈寄付に興味はあるけれど、何から始めたら良いのか分からない…」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。
遺贈寄付に少しでも関心を持たれた方には、はじめの一歩として、
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また、すでに遺贈寄付の条件が固まっている方や、
「国際協力」「子どもの貧困」など支援したい分野が決まっている方には、
国内最大規模のポータルサイト「遺贈寄付ガイド」であなたにぴったりの団体を探してみてください。
<記事監修>
一般社団法人 全国レガシーギフト協会 理事/遺贈寄附推進機構 株式会社 代表取締役
信託銀行の本部にて、全国の営業店から1500件以上の相続トラブルと10,000件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げ(後の全国レガシーギフト協会)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。