遺贈とは?贈与・相続との違いや手続きの流れ、注意点を解説!

遺贈とは?贈与・相続との違いや手続きの流れ、注意点を解説!

相続や贈与はなんとなく知っていても、遺贈については聞き慣れない方もいるのではないでしょうか。

遺贈は身内以外にも遺産を渡す方法です。ただし自動的に財産承継が発生する相続とは違い、遺贈は生前にしっかり準備しておかなければなりません。

そこで本記事では、

POINT
  • 遺贈の特徴、相続や贈与との違い
  • 遺贈の手続き方法
  • 遺贈で注意すべきポイント

という流れで、遺贈の悩みをまとめて解説します。
遺贈について詳しく知りたい人や、身内以外に財産を譲りたいと考えている人はぜひご一読ください。

なお、ここでお伝えする情報は2024年12月時点のものです。法改正により、関連法規が変更になる可能性があることをご了承ください。


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遺贈とは

遺贈とは、遺言によって自分の財産の一部またはすべてを特定の人物や団体に無償で譲与することを指します。

遺贈は、生前から親身になって支えてくれた友人や介護者など、法定相続人以外の人に財産を譲る際に利用されることが多く、遺言を通じて自分の意志を反映させる重要な手段です。

遺贈の対象となる財産としては、不動産、現金、株式、美術品などが挙げられます。

遺贈は、民法第964条により以下のように定められた権利です。

民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

出典:e-Govポータル「民法(明治二十九年法律第八十九号)

近年では、特定の人物への感謝の意を表すためだけでなく、自分が生涯を通じて大切にしてきた価値観や理念を後世に伝えるために、NPO・NGO法人や慈善団体、教育機関などに遺贈寄付として譲与するケースが増えています。

また、生前に支援していた環境保護団体や動物保護団体、信仰していた教会やお寺などの宗教法人にも譲与が可能です。

遺贈の意思は「遺言」に書いて表現します。
遺言とは、本人の生前の意思を反映し、自分が亡くなった後に残した財産や権利の分配方法を示すことを指し、「遺言書」という法的効力のある文書を作成します。

自分の意志を反映させた遺贈を行うには、法的に有効な遺言書を正しく作成することが必要です。

POINT
  • 遺贈は遺言により、指定する人物や団体に財産を譲与すること
  • 遺贈をするには、法的に有効な遺言書を正しく作成する必要がある

遺贈・相続・贈与の違いとは?

遺贈、相続、贈与は、いずれも財産を他人に渡す手段ですが、それぞれ仕組みや性質に違いがあります。

相続は、財産を所有する人が亡くなった後、法律で定められた法定相続人がその財産を引き継ぐことを指します。

遺言書がない場合でも、民法に基づいて法定相続人とその法定相続分が定められていますが、相続財産は法定相続人の共有財産となるため、法定相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、誰がどの財産をどのような割合で相続するのかを決める必要があります。相続できるのは亡くなった人の法定相続人のみとなります。

一方贈与は、生前に財産を誰に渡すかを決め、受贈者が受け継ぐことに同意することで財産を贈与することです。

贈与契約を結ぶことで、法定相続人以外の人にも財産を渡すことができますが、法定相続人か否かにかかわらず、贈与された金額によっては贈与税が課される場合があります。

遺贈は、遺言書を通じて財産を特定の人物や団体に渡す方法です。
生前ではなく死亡後に効力を発揮します。

また、遺贈と似た法律行為として、「死因贈与」があります。

死因贈与は贈与の一種で、生前に結ばれる契約によって贈与することが決まりますが、被相続人の死後に効力を発揮します。
遺贈は、財産を譲る側の一方的な意志に基づくのに対し、死因贈与は契約であり、双方の合意が必要な点が大きな違いです。

遺贈とは異なり、遺言書ではなく契約書を用いるのが一般的ですが、口頭合意でも成立します。

POINT
  • 相続は、被相続人の死亡後、相続権のある親族へ遺産が承継される
  • 贈与は、互いの合意があれば、指定した人物へ財産を生前に譲与できる
  • 遺贈は、被相続人の死亡後、遺言書により受遺者へ遺産が譲与される

遺贈は「受遺者」が受け取る

遺贈によって財産を受け取る人や団体を「受遺者」と呼びます。

受遺者は遺言書で指定された人物や団体で、必ずしも法定相続人である必要はありません。
例えば、生前仲が良かった友人や長年お世話になった団体、特定のNPO・NGO法人、動物保護団体なども受遺者に指定することができ、遺贈者の意志を反映させた財産の分配が可能です。

一方、「法定相続人」とは、法律で定められた財産を引き継ぐ権利や義務を持つ人のことです。配偶者、子ども、亡くなった人の両親、兄弟姉妹などが該当します。

受遺者と法定相続人の違いは、財産を受け取る権利が遺言に基づくか法定相続に基づくかにあります。受遺者が法定相続人でない場合でも相続税が発生する可能性があるため、税制面での確認も忘れないようにしましょう。

なお、遺贈の内容を実現するために必要な手続きを取る人を「遺贈執行者」と呼びます。
遺贈執行者は、弁護士や司法書士などに依頼するのが一般的です。

POINT
  • 受遺者:遺贈によって財産を受け取る特定の人物や団体
  • 法定相続人:法律で定められた財産を引き継ぐ権利を持つ人
  • 遺贈執行者:遺贈の内容を実現するために必要な手続きを行う人

課税される税金・税率が異なる

遺贈・相続・贈与は、課せられる税金と税率に違いがあります。

まず、遺贈と相続には「相続税」が課せられますが、贈与には「贈与税」が課せられます。

譲り渡す財産の額が同じ場合、贈与税の税率は相続税よりも高く設定されており、基礎控除の額は少ないです。
そのため、生前と死後では税金の負担が大きく異なります。

また、遺贈によって譲り受ける財産に不動産が含まれている場合、「不動産取得税」が発生する可能性があります。

法定相続人以外が不動産を受け取る場合には、相続人に比べて登録免許税の税率が高くなる点にも注意しましょう。

遺贈によって発生する税金については、後ほど詳しく解説します。

遺贈の種類には何がある?

遺贈には、残す金額の決め方の違いによって「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類に分けられます。

遺言書の作成時には、2つの違いを理解し、遺贈者の意志を正確に伝える方法を選択しましょう。

包括遺贈

包括遺贈とは、遺言者が自分の財産全体またはその一定の割合を受遺者に譲ることを指します。
例えば、「遺産のすべて」や「遺産の5割」という形で指定されることが一般的です。

ただし、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになるため、遺贈者の負債も含めて承継することになります。

負債が多い場合には受遺者の負担となる可能性もあるため、注意が必要です。

特定遺贈

特定遺贈とは、遺言者が具体的な財産を指定して受遺者に譲る方法です。

例えば、「自宅の土地と建物」「現金1,000万円」「所有する株式100株」という形で、譲与する財産を明確に指定します。

ただし、遺言書に記載された財産が遺贈者の死後に存在しない場合、「生前処分」したとみなされ、特定遺贈の効力はなくなります。

POINT
  • 包括遺贈:遺産の全体について割合を指定して遺贈
  • 特定遺贈:具体的な遺産を個別に指定して遺贈

遺贈のメリット・デメリット

遺贈には多くのメリットがある一方で、適切に計画しなければトラブルや余分な負担が発生する可能性もあります。

ここでは、遺贈のメリット・デメリットを具体的に説明します。

遺贈のメリット

遺贈のメリットは、法定相続人以外の人物や団体に財産を譲与できる点にあります。

例えば、法定相続人には含まれない孫に財産を遺贈することや、遺言者が支援したい団体に遺贈して社会や地域に貢献することも可能です。

例えば、NPO法人・NGOへの寄付は、社会的意義のある財産分配として注目されています。

遺贈のデメリット

遺贈のデメリットとしては、手続きの煩雑さや費用負担の増加、トラブルに発展する可能性などが挙げられます。

遺言書は法律で定められた形式に従って作成する必要があり、不備があると無効になるため注意が必要です。
また、遺贈により受遺者(ただし法人を除く)にも相続税が発生するほか、不動産が含まれる場合は不動産取得税や登録免許税などの費用が受遺者にかかります。相続人ではない受遺者に負担が発生する点にも配慮が必要となるでしょう。

本来、自分の財産は遺言で自由に行き先を決められるのですが、相続人のなかには勝手に自分の取り分を皮算用する人もいるので、法定相続人以外に財産が遺贈されて不満を持つこともあります。

遺贈の内容が法定相続人の遺留分を侵害していると、遺留分侵害額請求が行われる場合もあり、遺言どおり配分されるのですが、結果として遺贈者の意志が完全には実現されないこともあります。

このような事態避けるためには、事前に家族との話し合いや専門家への相談も検討すると良いでしょう。

【POINT】
  • 遺贈のメリット:親族以外の人物や団体でも受遺者に指定できる
  • 遺贈のデメリット:予想外の遺贈に法定相続人が不満をもつ場合がある

遺贈の手続きの流れ

遺贈の手続きは以下の流れで行われます。

  1. 専門家へ相談
  2. 遺言書の作成・保管
  3. ご逝去の通知および遺言書の開示
  4. 遺言執行

遺言書作成には複雑な部分があるため、弁護士など専門家の力を借りながら手続きを進めるのがおすすめです。ここでは、専門家を遺言執行者(遺贈の内容を実現するために、必要な手続きを行う人)に指定するケースで、遺贈の手続きを見ていきましょう。

なお「いきなり専門家に相談するのは心理的にハードルが高い」という方は、遺贈についての情報が網羅された団体のパンフレットを、無料で取り寄せてみるのも良いでしょう。

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また、すでに遺贈寄付の条件が固まっている方や、「国際協力」「子どもの貧困」など支援したい分野が決まっている方には、国内最大規模のポータルサイト「遺贈寄付ガイド」であなたにぴったりの団体を探してみてください。

1.専門家へ相談

まずは弁護士や司法書士など、遺贈に詳しい専門家へ相談しましょう。もし特定の団体へ遺贈を考えている場合、団体の担当者が遺贈手続きの相談を受け付けているケースがあります。この場合は団体の公式HPから問い合わせてみるといいでしょう。

また、弁護士や司法書士へ遺贈を相談する際、同時に遺言執行者になって頂けないか依頼することも検討してください。相続人や受遺者が遺言執行者になることも可能ですが、トラブルを避けるために中立の人物を指定するのが望ましいです。そのため、弁護士や司法書士に遺言執行者を依頼するのがおすすめです。

2.遺言書の作成・保管

遺贈の内容を記した遺言書を作成し、自宅や専門機関(法務局や公正役場など)で保管します。遺言書は主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類の形式があり、作成方法や保管場所が異なります。

【自筆証書遺言】

  • 本人が遺言書全文を直筆する(財産目録を除き、ワープロやパソコンでの入力不可)
  • 遺言書は、自宅で保管したり弁護士などの専門家に預けたり法務局で保管したりできる

【公正証書遺言】

  • 証人2人以上の立会いのもと、遺言者の口述を公証人が筆記して作成する
  • 遺言書の原本は公正役場で保管、正本や謄本は自宅保管が可能

自筆証書遺言は、費用や手間を抑えて遺言書を作成できます。ただし、作成後は(法務局保管の場合を除き)家庭裁判所で遺言書の検認が必要です

公正証書遺言の作成は公正役場で行えます。作成手数料(最低16,000円から)が発生しますが、不備なく確実に作成できるのでおすすめです。また遺言書原本は公正役場で保管するため、自宅で紛失するリスクもありません。

3.ご逝去の通知および遺言書の開示

被相続人が逝去されたら、遺言執行者へ通知します。遺言執行者に訃報がすぐ届くよう、誰が通知するか事前に決めておきましょう。

なお、遺言書が自宅にあるのを発見しても、家族が勝手に開封してはいけません。自筆証書遺言を自宅保管していた場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。通常、検認手続きには1~2ヶ月程度かかります。

自筆証書遺言は検認後に、公正証書遺言は死亡通知後速やかに、遺言執行者から相続人や受遺者へ、遺言書の内容が開示されます。

4.遺言執行

遺言書の開示を受け、相続人や受遺者は財産を受け取るかどうか意思表示をします。

遺産を受け取る場合は、遺言執行者が速やかに財産の引き渡しを開始します。また、遺産を受け取らずに、放棄する選択も可能です。放棄する場合は、特定遺贈の場合を除き、原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立しなければなりません。

遺言執行が終われば、遺贈の一通りの流れは完了です。遺贈する場合はまず弁護士などへ相談のうえ遺言書を作成し、逝去後の手続きは遺言執行者へ託しましょう。

また遺贈する際は、受遺者や相続人に税金が発生します。納税者の指定を遺言書でする場合もあるため、遺贈で発生する税金については事前に知っておくと安心です。遺贈で発生する税金について、さっそくチェックしましょう。

遺贈によって発生する可能性がある3つの税金とは?

遺贈により財産を取得する場合、税金が発生します。発生する可能性がある税金は、以下の3つです。

POINT
  • 相続税
  • 不動産取得税・登録免許税
  • みなし譲渡課税

どのような税金なのか解説します。なお、ここでお伝えする情報は2024年12月時点のものです。法改正により、関連法規が変更になる可能性があることをご了承ください。

1.相続税

相続税は、故人の資産を引き継いだ際に発生する税金です。ただし相続税には基礎控除額があるため、遺産が基礎控除内であれば税金がかかりません。相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出できます。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

遺産の課税価額が基礎控除額を超える場合、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告が必要です。

なお、被相続人の配偶者・親・子(養子含む)・代襲相続人となった孫以外の人物が遺贈を受けた場合、相続税が2割加算となるため覚えておきましょう。

2.不動産取得税・登録免許税

遺産に不動産があると、不動産取得税や登録免許税が発生する可能性があります。不動産取得税は不動産の取得時にかかる税金、登録免許税は不動産の名義変更時にかかる税金です。

受遺者が相続人の場合は、不動産取得税は発生しません。相続人以外の第三者や法人などが特定遺贈で不動産を受け取ると、不動産取得税が発生します。

また、登録免許税は受遺者によって税率が異なります。

POINT
  • 相続人→不動産の固定資産税評価額の0.4%
  • 相続人以外→不動産の固定資産税評価額の2%

もし不明点があれば、最寄りの税務署へ相談するのがおすすめです。

3.みなし譲渡課税

みなし譲渡課税は、不動産や株式の現物を遺贈するとき、含み益があると発生する可能性があります

みなし譲渡課税は、受遺者ではなく相続人が納税者となるケースもあるもの。もし「相続人=受遺者」ではない場合、相続人は遺産を取得していないのに税金を支払わなければならない事態が起こりえます。

みなし譲渡課税をだれが支払うのかといったトラブルを防ぐには、納税負担者について遺言書へ明記することが大切です。

このように、遺贈では相続税以外にもさまざまな税金が発生します。不動産や株式などを遺贈する際は、不動産取得税やみなし譲渡課税が発生する場合もあると覚えておきましょう。

また遺贈は資産だけでなく、負債も引き継ぐケースがあります。もし遺贈を受けてマイナスになる場合は遺贈の放棄を検討しましょう。遺贈の放棄について、詳しくご紹介します。

遺贈は放棄することもできる

遺贈で受け取れるのは資産に限らず、負債を引き継ぐ可能性もあります。

遺贈を放棄できる期間は、包括遺贈と特定遺贈で異なります。

【遺贈を放棄できる期間】

●包括遺贈:遺贈を受け取ることを知ってから3ヶ月以内
●特定遺贈:原則として期限なし


それぞれの場合について、詳しく見てみましょう。

包括遺贈の放棄方法

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有しますので、包括遺贈を放棄する場合は、相続人と同じように、家庭裁判所へ相続放棄の申立が必要です。相続放棄できる期間は、遺贈を受けることを知ってから3ヶ月以内となります。3ヶ月で判断できない場合は、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立をすることもできます。

遺言執行者より遺贈の通知があり、相続放棄や限定承認の手続きをしない、または遺言執行で財産処分に着手すると、遺産を受け取る意思表示とみなされます。もし放棄する意思がある場合は、なるべく速やかに遺言執行者へ連絡し、家庭裁判所へ申し立てしましょう。

特定遺贈の放棄方法

特定遺贈では、原則として放棄の期限がありません

しかし、遺言執行者は遺贈を受ける・受けないの意思を受遺者から確認できないと、スムーズに相続手続きを進められません。そのため、相続の利害関係者は、受遺者に対し意思表示を催告できます。遺贈の受取意思について回答期限を設け、連絡がなければ受け取るとみなされるのが一般的です。

ここまで、遺贈の放棄について解説しました。

このように遺贈では、知らないと損をすることがあるものです。遺贈について詳しく調べなかったばかりに、遺贈を受け取れなかったり人間関係がギクシャクしたりするのは嫌ですよね。

そこで次は、遺贈で注意すべき点を4つ解説します。「これから遺贈の手続きをしようと考えている」という方は、ぜひ読んでください。

遺贈するときの4つの注意点とは?

遺贈するときに知っておきたい注意点は、以下の4つです。

POINT
  • 受遺者が先に亡くなると、遺贈が無効になることもある
  • 相続人の「遺留分」が残る点に注意
  • 遺贈先の団体によって、受け取りできないパターンもある
  • 家族関係がギクシャクすることもある

遺贈する際、遺贈が実現できなかったり、家族関係に影響が出たりする事態が考えられます。注意点をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

なお、ここでお伝えする情報は2024年12月時点のものです。法改正により、関連法規が変更になる可能性があることをご了承ください。

【注意点1】受遺者が先に亡くなると、遺贈が無効になることもある

受遺者が被相続人より先に亡くなると、遺贈が無効になることがあります。

遺産を受け取る予定だった受遺者が亡くなった場合、その遺贈は無効となり、遺言がなかった場合と同じような状態になります。受遺者の家族がそのまま遺贈を引き継ぐことにはなりません。

ただし、受遺者が先に死亡したときに備え、遺産の扱いについて遺言書へ記せます。もし『遺言者よりも先に受遺者が亡くなった場合は、受遺者の相続人へ遺贈する。』といった文言を残せば、受遺者の相続人が遺産を引き継げます。

【注意点2】相続人の「遺留分」が残る点に注意

被相続人の配偶者や子ども等には、決められた割合の遺産を相続できる保障が存在します。保障された相続財産の割合を「遺留分」といい、遺贈の内容によっては、相続人から遺留分に不足する金銭の支払いを請求される可能性も考えられるもの。

仮に「受遺者へ全財産を遺贈する」という遺言により相続人は遺産を一銭も受取れない場合、相続人は受遺者に対し「遺留分侵害額請求」を行えます。

遺留分の請求により受遺者と相続人でトラブルになる可能性も考えられます。遺言書作成の際は遺留分に配慮しましょう

【注意点3】遺贈先の団体によって、受け取りできないパターンもある

社会課題に取り組むNPO法人や財団など、団体を遺贈先とすることがあります。しかし、どのような財産でも遺贈できるわけではなく、遺贈で受け取れない財産を定めている団体もあります

とくに、売却が難しい土地や不動産には要注意です。具体的には、以下のような財産は遺贈できない場合があります。

  • 山林や農地
  • リゾートマンション
  • 権利関係が複雑な不動産など

団体に遺贈したいときは、受け取れない財産があるか事前に問い合わせましょう。事前に団体からパンフレットを取り寄せて、遺贈寄付の情報を集めておくのも良いでしょう。

gooddoマガジンが厳選した、遺贈寄付を受け付けている団体のパンフレットは下記からまとめて取り寄せることができます。気になる方はぜひチェックしてみてください。

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【注意点4】家族関係がギクシャクすることもある

遺贈の内容によっては、家族・親族間で関係がギクシャクすることもあり得るでしょう。遺言書を作成した本人はすでに亡くなっているため、家族や親族は説明を求めることもできません。

このような事態に備え、遺言書に「付言事項」を作成しておくのがおすすめです。付言事項とは、財産の処分などの法律行為以外のことを書き記すもので、誰にどう財産分与するか決めた背景や被相続人の思いなどを記載することができます。

付言事項に法的拘束力はありませんが、相続人が被相続人の思いを尊重するきっかけになるでしょう。

残った財産を寄付するなら「遺贈」を検討しよう

今回は遺贈について詳しく解説しました。内容をまとめると以下の通りです。

【遺贈のポイント】
  • 遺贈は遺言により相続人以外の第三者へも遺産を引き継げる
  • 遺贈は「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類がある
  • 遺贈を受け取ると、相続税や不動産取得税が発生する場合もある

遺贈は遺言書の作成や税金が関係するため、専門家の力を借りながら手続きを進めるのがおすすめです。相談先は弁護士や司法書士などがあります。またNPO法人など団体へ遺贈する場合は、相談する際に遺贈できない財産について事前に確認するのがおすすめです。

「家族以外にも遺産を譲りたい」という人はさっそく遺贈を検討してみませんか。


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「そもそも寄付や募金との違いって何だろう?」
「寄付する意味や寄付の方法って何があるのだろう?」

このような点が気になっている方は、ぜひ下記記事もご一読ください。

>> 寄付とは?寄附や募金、義援金との違い、おすすめの寄付先を紹介

<記事監修>

信託銀行の本部にて、全国の営業店から1500件以上の相続トラブルと10,000件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げ(後の全国レガシーギフト協会)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。