終活の身辺整理、何から始める?具体的な手順を解説

終活の身辺整理、何から始める?具体的な手順を解説

近年では、人生の最終章を穏やかに迎え、大切な家族に負担をかけないために、元気なうちから始める「終活」として、身辺整理の重要性が増しています。


「終活」と聞くと、どうしても億劫に感じてしまうかもしれません。

特に独身の方や子どもがいない夫婦の場合、「自分が亡くなった後に残される物」について考えるのは、不安を伴うものです。


しかし、身辺整理は、人生の棚卸しをする絶好の機会です。

この記事では、身辺整理の必要性から具体的な進め方を紹介していきます。

身辺整理を通して未来への希望を見つけ、心穏やかに過ごすための第一歩を踏み出しましょう。


終活の身辺整理、なぜ必要?

終活の身辺整理は、単なる片付けだけではなく、残された家族の負担を大きく減らすことにつながります。

どこに何があるか分かりやすく整理されていれば、遺品整理の手間や費用、そして何より精神的な負担を軽減できます。


また、財産や重要書類を整理することで、相続に関するトラブルを未然に防ぐことも可能です。

元気なうちに身辺整理を始めることで、残りの人生をより豊かに、そして自分らしく生きるための時間を創造できるようになります。


身辺整理を始めるベストタイミングは?

身辺整理は、いつから始めたら良いのかと迷っていませんか?実は、身辺整理に「早すぎる」ことはありません。

体力・気力があるうちに始めることで、じっくりと時間をかけて進められ、心身への負担も軽減できます。


具体的なタイミングとしては、定年退職後や子どもの独立など、ライフステージの変化時がおすすめです。

ほかにも、両親の介護や死を経験したとき、自身の病気やけが、大きな災害を経験したときなども、人生を見つめ直すきっかけとして身辺整理を始める良いタイミングです。

しかし、一番は「思い立ったとき」に始めることです。今、少しでも気になっているなら、まずは小さな一歩から始めてみましょう。


具体的な身辺整理の進め方

身辺整理は、人生の棚卸しをする貴重な機会です。以下を参考に、効果的に進めましょう。


ステップ1:現状把握と目標設定

まずは、家全体の持ち物を把握することから始めます。

部屋ごとに写真撮影をし、持ち物リストを作成することで、現状を可視化できます。

この作業を通して、自分がどれだけの物を持っているのかを客観的に把握することが重要です。

次に、身辺整理の目標を設定します。

「1年以内に家全体の不用品を半分にする」「3ヶ月で洋服を整理する」「大切な写真をデジタル化して整理する」など、具体的であればあるほど、モチベーションを維持しやすくなります。

ステップ2:整理・処分

いよいよ整理・処分の段階です。まずは「捨てる基準」を明確にしましょう。

例えば、「1年以上使っていない物」「なくても困らない物や壊れている物」「重複している物」は捨てましょう。デジタルデータの場合は、必要なデータか、そうでないかを基準に判断してください。

思い出の品は無理に捨てる必要はありません。写真に撮ったり、デジタル化したり、一部だけを残して整理する方法もおすすめです。

どうしても迷う場合は、「保留ボックス」を作り、一定期間後に再度検討しましょう。

処分方法には、主に下のようなものがあります。


方法
内容・メリット
売却
フリマアプリ、オークションサイト、リサイクルショップなど。不用品を売却してお金に変えることができる。
寄付
必要としている人に物を届けることができる。
譲渡
家族、友人、知人に大切な物を引き継いでもらうことができる。
廃棄
自治体の回収サービスや不用品回収業者。大型家具なども処分できる。

ここからは、カテゴリー別にさらに細かく整理の方法を見ていきましょう。


衣類

衣類は着用頻度やサイズ、状態を基準に整理します。

思い出の服は写真に撮り、保管、寄付、リメイクなどを検討するのも良いでしょう。

家具・家電

家具・家電は使用頻度や状態をチェックし、不要な物は買取業者やリサイクルショップ、自治体の回収サービスなどを利用しましょう。

整理に取りかかる前に処分方法を事前に調べておくのがおすすめです。

書籍・書類

重要書類はファイリングし、保管場所を明確にしましょう。不要書類はシュレッダーで処分してください。また、電子化の検討もおすすめです。

貴金属・宝飾品

貴金属や宝飾品は、鑑定書があれば一緒に用意しておきましょう。

売却、質入れ、相続のほかに、遺贈という選択肢もあります。

写真・アルバム

写真やアルバムは、デジタル化やフォトブックの作成がおすすめです。

残したい写真は整理し、保管場所を明確にしましょう。

手紙・日記

手紙や日記は読み返し、取っておく物と処分する物を選別しましょう。デジタル化も有効です。内容によっては、一部を抜粋してエンディングノートに書き残すのも良いでしょう。

趣味のアイテム

コレクションは整理、売却、譲渡、寄付、処分を検討しましょう。思い入れのある品は、写真に残したり、一部だけ残して整理してください。

ペット用品

ペットとの思い出の品も、写真として残したり一部を形見として残したりするのも良いでしょう。

デジタルデータ

パソコン、スマートフォン、クラウドのデータの整理も必要です。

デジタル遺品対策として、アクセス情報、パスワードは一括管理しておきましょう。専用のパスワード管理ツールを活用するのもおすすめです。

財産

預貯金、不動産、株券、保険などをリスト化し、現状を把握しましょう。

銀行口座やクレジットカードの整理・解約、遺言書作成を作成し贈与、負債の整理なども行います。

人間関係

終活は、人間関係を見直す良い機会です。

今後のお付き合いについて考えたい人、感謝を伝えたい人、連絡を取りたい人、葬儀に呼んでほしい人などをリストアップしておきましょう。

情報・サービス

加入しているサービス、会員登録しているサイト、定期購読している雑誌などをリストアップし、解約・整理しましょう。不要なサービスを継続して利用しないように心がけてください。


ステップ3:収納と整理整頓

整理・処分を終えたら、次は残った物をどのように収納し、整理整頓するかです。

使用頻度の高い物は取り出しやすい場所に、使用頻度の低い物は奥にしまうなど、動線を意識することがポイントです。
収納ケース、引き出し、棚などを活用し、限られたスペースを最大限に有効活用しましょう。

100円ショップなどでも便利な収納グッズが数多く販売されています。

収納ケースや箱に、中身が何かを書いたラベルを貼るのもおすすめです。何がどこにあるか一目で分かるようになり、家族が探す際にも役立ちます。

一度収納した物がその後増えてきたら、定期的に見直しを行いましょう。

ステップ4:貴重品・重要書類の管理

貴重品や重要書類は、紛失や盗難のリスクを避けるため、安全な場所に保管し、管理方法を明確にしておく必要があります。

まずは、貴重品や重要書類の種類、数量、保管場所をリスト化しましょう。このリストは、必要なときに必要な物をすぐ見つけることができて便利です。

貴重品は金庫に、重要書類は耐火性の保管庫などに保管するのがおすすめです。保管場所は家族にも共有しておきましょう。
重要書類はスキャンしてデジタルデータとして保存しておけば、紛失のリスクを減らすことができます。

オンラインサービスなどのアカウントのパスワードは、パスワード管理ツールなどを活用し、安全に管理しましょう。

これらの情報はエンディングノートにも記録しておくと便利です。家族にも保管場所や管理方法を共有しておけば、万が一の際にもスムーズに対応できます。

ステップ5:エンディングノート・遺言書の作成

エンディングノートには、医療や介護に関する希望、葬儀やお墓に関する希望、デジタル遺品に関する情報、そして家族へのメッセージなどを記録しておきましょう。

遺言書は、相続に関するトラブルを避けるために重要です。誰に何を相続させるかを明確に記し、遺言の内容を実行する遺言執行者も指定しましょう。

エンディングノートや遺言書の作成については、士業などの専門家に相談することも可能です。

関連記事:終活ノート完全ガイド!書き方から選び方、デジタル終活まで徹底解説


終活の身辺整理における心構え

終活の身辺整理は、人生の大きな転換期に向き合う作業です。

そのため焦らず、完璧を求めすぎず、自分のペースで進めることが大切です。無理にすべてを一度にやろうとせず、少しずつできる範囲から始めましょう。


また、家族とのコミュニケーションも重要です。整理の進捗状況や希望を共有し、意見を尊重しながら進めることで、家族の理解と協力を得られます。

1人で抱え込まず、困ったときは専門家に相談することも考えてみましょう。


そして、最も大切なのは、自分の気持ちと向き合うことです。思い出に浸ったり、感謝の気持ちを感じたりしながら、前向きな気持ちで身辺整理に取り組みましょう。


自分の想いを未来へつなぐ遺贈寄付という選択肢

身辺整理を進めていくと、本当に大切な物、残したい物が見えてくるはずです。

そのなかで、自分の財産を社会貢献のために役立てたいと考える方もいるかもしれません。特に、法定相続人がいない方は自分の財産の使われ方を不安に思うこともあるかもしれません。


ここで、遺贈寄付という選択肢について考えてみましょう。遺贈寄付とは、遺言によって自分の財産の一部または全部を、特定の団体(NPO・NGO法人、公益法人、大学、病院など)や個人に譲与することです。

遺贈寄付は、あなたの想いを形にし、社会に役立てることができます。また、自分の意思で寄付先が決められるため、納得のいく財産活用ができるでしょう。


身辺整理を進めるなかで、もし「遺贈寄付」に興味を持ったら、「遺産寄付はじめてガイド」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

身辺整理を始めることで自分らしい終活、未来への貢献、新たな人生の価値を見つけることができるかもしれません。



終活・身辺整理に関するよくある疑問

【疑問1】生前整理と遺品整理の違いは?

A. 生前整理は生きているうちに行う整理、遺品整理は亡くなった後に行う整理です。生前整理をすることで、遺品整理の負担を軽減できます。

【疑問2】自分でできる範囲と専門業者に依頼すべき範囲は?

A.貴重品や重要書類の整理、思い出の品の整理などは自分で行い、不用品の処分や大型家具の搬出などは専門業者に依頼するのがおすすめです。

【疑問3】終活にかかる費用相場は?

A.行う内容によって大きく異なりますが、数万〜数十万円程度かかる場合が多いです。専門業者に依頼する場合は、複数の業者から見積もりを取りましょう。

【疑問4】遺贈とは?メリットは?

A.遺贈とは、遺言によって財産を特定の個人や団体に譲与することで、社会貢献ができる、相続税対策になるなどのメリットがあります。

詳しくは「遺産寄付はじめてガイド」をご覧ください。



身辺整理で始める、自分らしい終活

身辺整理は、単なる片付けではなく、自分の人生を振り返り、未来へ想いをつなぐ大切なプロセスです。

この記事で紹介したステップを参考に、焦らず、少しずつ、自分らしい身辺整理を進めてみてください。


大切な家族への負担を軽減するだけでなく、あなた自身の人生をより豊かにするはずです。

さらに、独身の方や子どもがいない夫婦、法定相続人がいない方など、身辺整理をするなかで自分の財産の遺し方について考える際には、遺贈寄付という選択肢も視野に入れ、未来への貢献を考えてみてはいかがでしょうか。

「遺産寄付はじめてガイド」では、遺贈についてさらに詳しく知ることができます。