身寄りのない高齢者は増加傾向にあります。
「ケガや病気のときに頼れる人がいない」
「認知症を患ったときの生活やお金の管理はどうしよう…」
「自分が亡くなったあとのお墓の手続きは誰がやってくれる?」
上記のように、将来への不安を抱えたまま生活している高齢者は多いです。「人生100年時代」と言われている今だからこそ、最後のときまで安心して自分らしく生きるために、早めに対策しておきましょう。
この記事では身寄りのない高齢者の現状や今からできる対策を解説します。下記のような「おひとりの高齢者向け」サービスも紹介しますので、参考にしてください。
身寄りのない高齢者は増加傾向
「身寄りのない」とは、一般的に親族がいないもしくは親族はいるけれど頼れない状態のこと(本記事の意味合いも同様とする)を指します。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、世帯主が65歳以上の一般世帯総数のうち6同年代の単独世帯の割合は、2020年の35.2%から、2050年は45.1%へと大幅に増加する見込みです。
また65歳以上の全人口のうち、独居率は2020年で男性16.4%・女性23.6%、2050年には男性26.1%・女性29.3%になることが予想されています。
上記は単身世帯や一人暮らしの数値で「身寄りがないか」までは言及されていません。しかし同調査によると未婚率も上昇する見通しのため、身寄りのない高齢者は増え続けていくことが予想されます。
参照:令和6年国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」
身寄りのない高齢者に待ち受ける5つの困難
身寄りのない高齢者に起こり得る5つの困難を紹介します。
- 保証人がおらず入院や施設入所の手続きが大変になる
- 判断能力の低下により金銭管理が難しくなる
- 認知症を発症すると契約行為ができない
- 孤独死のリスクが高まる
- 死後の事務を遂行する人がいない
上記の困難をトータルサポートできるサービスもあります。困難を解決する方法の1つとして活用するのもおすすめです。
1.保証人がおらず入院や施設入所の手続きが大変になる
身寄りのない高齢者は、入院や施設の入所手続きに苦労します。
医師法や厚生労働省の省令では、保証人がいないことは入院や施設への入所を拒む理由にはなりません。しかし、保証人がいないことで手続きが難航することもあるのが現状です。
またマンションやアパートの賃貸借契約を結ぶ場合は、連帯保証人が必要になります。
保証会社を利用して契約できるケースもありますが、費用が発生したりそもそも年齢を理由に審査が通らなかったりすることもあるのです。
2.判断能力の低下により金銭管理が難しくなる
加齢に伴い判断能力が低下してくると、必要な支払いが滞ったり無駄遣いが多くなったりと金銭の管理がうまくできなくなってきます。「気がついたら預金が底をついていた…」ということもあり得るでしょう。
また高齢であることにつけこまれ、詐欺などの犯罪に巻き込まれるリスクも高まります。身寄りがないことで、気軽に相談できる人や危険を察知して止めてくれる人もいないため、被害に遭いやすくなるはずです。
3.認知症を発症すると契約行為ができない
認知症で判断能力がなくなると契約行為ができなくなります。
民法3条の2では「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と明記されており、契約したとしても無効です。
契約行為ができないということは、入院や施設への入所の手続きも自分一人ではできません。身寄りのない高齢者が認知症を発症した場合は、必ず何らかのサポートが必要です。
参考:民法|e-Gov
4.孤独死のリスクが高まる
身寄りのない高齢者が一人暮らしの場合、自宅で倒れたときにすぐ対処できず孤独死のリスクが高まります。社会との繋がりが希薄になっているほど、突然亡くなっても周りから気づかれにくく、発見が遅くなってしまいます。
高齢者の一人暮らしは、自分の体調の変化を見逃したりつい面倒で病院にかからなかったりすることで、病気の発見が遅れがちです。体調管理にもしっかり意識を向ける必要があります。
5.死後の事務を遂行する人がいない
身寄りのない高齢者は、死後の遺品整理や葬儀などの事務作業を遂行する人がいません。疎遠になっている親戚や近所の顔見知りの方など、迷惑をかけられない間柄の方がやらざるを得なくなってしまいます。
また納骨や遺品整理などで希望があっても、叶えるのが困難です。自分の死後の手続きがどうなるのか分からない状況は、大きな不安になるでしょう。
身寄りのない高齢者が実施しておきたい対策
身寄りのない高齢者に待ち受ける困難を解決するために、実施しておきたい以下の対策を紹介します。
- 後見制度を利用する
- 尊厳死宣言書を作成する
- 死後事務委任契約を結ぶ
- 遺言書を作成する
- 財産管理委任契約を検討しておく
- 老人ホームや高齢者向け住宅などへの入所を考える
- 高齢者向けのサポート事業を活用する
順に詳しくみていきましょう。
後見制度を利用する
判断能力があるうちに、後見人と契約しておける任意後見制度を利用すれば、物事を判断できなくなった段階で、財産管理や日常生活での支援を受けられます。
費用の連帯保証など対象外のこともありますが、判断能力があるうちに後見人や依頼事項を決めておけるため安心です。
任意後見制度を利用していなかった場合は、判断能力の低下後に家庭裁判所が選んだ後見人が本人に代わって、財産管理などをおこなう法定後見制度を利用することになります。
尊厳死宣言書を作成する
尊厳死宣言書とは、治る見込みのない病状のときに「延命治療をやめて痛みや苦しみの緩和に重点をおく医療に切り替えてほしい」という意思を残しておく公正証書です。
意思疎通できない状態になった場合、延命治療をやめてほしいと思っていても、その気持ちを理解している人がおらず希望通りに対処してもらえません。
尊厳死宣言書は気持ちが変わったら撤回できます。最期の迎え方を自分で決めるためにも、身寄りのない高齢者は、尊厳死宣言書を作成しておくことをおすすめします。
死後事務委任契約を結ぶ
死後事務委任契約とは、死亡後に必要になる手続きを委任するためのものです。死亡後の手続きは、葬儀・お墓の管理・各種届出・医療費等の精算など内容が多岐にわたります。事前に自分がどうしたいのか決めておくと、周りの人にも迷惑をかけません。
どこまで委任するかは自由に契約内容を決められますが、相続や身分関係に関する事柄、生前の生活サポートや財産管理は対象外です。
遺言書を作成する
自分で作成する自筆証書遺言もありますが、公証人に依頼して公証役場で保管される信用性の高い公正証書遺言がおすすめです。
証人が2名必要になりますが、親族や親戚など相続に関わる人は対象外のため、身寄りがなくても友人などに依頼できます。
遺言書に記載できるのは、死後事務委任契約の対象外である相続や財産処分・相続人の身分などです。身寄りがなくても希望通りに手続きを進められます。
財産管理委任契約を検討しておく
財産管理委任契約を結ぶと、身体的に不自由で外出が難しい場合に、預貯金の引き出しや公共料金の支払いなどの財産管理を委任できます。
契約内容は公序良俗の範囲内で自由に決められ、介護認定や入院・入所手続きなどを対象にすることも可能です。
ただし判断能力に問題がないことが前提のため、認知症などで判断できなくなった時点で財産管理委任契約は終了します。財産管理委任契約について理解しておけば、いざというときに役立つでしょう。
老人ホームや高齢者向け住宅などへの入所を考える
日常生活を1人で問題なく過ごせているうちから、施設への入所を考えておきましょう。施設に入所できれば、社会と繋がれて孤独死も避けられます。
高齢者向けの施設は、介護が必要な方だけでなく、自立した生活を送れるサービス付き高齢者向け住宅や老人ホームなどさまざまです。
身寄りがなくても保証会社などの利用で入所できる施設もあるため、元気なうちからリサーチしておきましょう。
高齢者向けのサポート事業を活用する
身寄りのない高齢者向けのサービスとして、高齢者等終身サポートを実施している民間事業も多くあります。「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」が主なサービス内容です。
規制法令などがなくトラブルも散見されますが、それに対して2024年6月には内閣府のホームページにて「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が公開されました。今後は需要の拡大とともに安心して利用できるよう、整備が進むことが予想されます。
安心して契約できる高齢者向けサポートサービスをお探しの方は「おひさぽ」の利用を検討してみませんか?身元保証や任意後見サポート、死後事務支援サポートなど、身寄りのない高齢者にとってありがたいサービスが多くあります。詳しくは下記をご確認ください。
サービス例:家族の代わりにずっと寄り添う「おひさぽ」
身寄りのない高齢者の悩みを相談できる主な窓口
身寄りのない高齢者が悩みを相談できる窓口はおもに以下の3つです。
- 司法書士や弁護士
- NPO法人などの民間事業者
- 自治体の地域包括支援センター
それぞれどのようなことを相談できるのか紹介します。
司法書士や弁護士
司法書士や弁護士は、遺言書や相続関係、成年後見制度などについて相談できます。公正な立場と法律の知識で的確なアドバイスをもらえるのはもちろん、手続きの代行も可能です。
身寄りのない高齢者が任意後見制度を利用する場合、後見人に弁護士を選任するケースもあります。法律に関することを多面的にサポートしてもらえる頼れる存在です。
NPO法人などの民間事業者
高齢者向けの身元保証や生活支援サービスなどを実施している民間事業者がたくさんあります。内容や料金なども幅広いため複数の事業者から話を聞くなどして、比較検討するのがおすすめです。
一例として「おひさぽ」では経験豊富な専門家による、病院と連携した見守りサービス・入院や入所時の身元保証・死後事務のサポートなどをおこなっています。
自治体の地域包括支援センター
自治体の地域包括支援センターでは、高齢者の生活や健康全般の相談が可能です。
民間事業の身元保証や生活支援、死後事務サービスなどを受けたいと思っているときに相談することで、消費者トラブルの防止に繋がることもあります。
司法書士や弁護士に相談するのはハードルが高いと感じる方は、まず自治体の地域包括センターに相談するのがおすすめです。
身寄りのない高齢者の遺産はどうなる?
身寄りがなくても遺言書を用意すれば遺産を相続する人を指定できますが、遺言書がない場合は以下のように処理されます。
- 法定相続人が相続する
- 特別縁故者が受け継ぐ
- 国庫に帰属される
順に解説します。
法定相続人が相続する
いざというときに頼れる間柄の親族がいなくても、法定相続人がいれば、法的に遺産は相続されます。法定相続人の順位と範囲は以下のとおりです。
なお配偶者は常に法定相続人になります。
- 第一順位:子、子がいない場合は孫、子および孫がいない場合はひ孫
- 第二順位:父母、父母がいない場合は祖父母
- 第三順位:兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は、甥姪
順位が同じ人が複数人いる場合は、全員が相続人になります。先の順位の人が1人でもいれば、後の人は相続人にはなれません。
特別縁故者が受け継ぐ
法定相続人が一人もいなければ、特別縁故者が遺産を受け継ぎます。特別縁故者とは、内縁の夫や妻など生前に特別強い繋がりがあった人が対象です。
対象だからといって自動的に遺産を受け継げるわけではありません。対象者が自身で申し出て家庭裁判所で手続きしたうえで、正式に特別縁故者として認められた場合に相続財産の全部もしくは一部を受け継げます。
ただし手続きは複雑で時間がかかるため、特別縁故者に該当する方に確実に遺産を受け継ぎたい場合は遺言書が有効です。
国庫に帰属される
法定相続人および特別縁故者がおらず、遺言書が残されていない場合は民法第959条により、遺産は国庫に帰属され国に納められることになっています。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
引用:民法|e-Gov
実は毎年数百億円ほどのお金が国庫に帰属されているのです。国庫に帰属された遺産は、国のために有効に活用されますが、遺産の持ち主は使い道を決められません。
身寄りのない高齢者は遺産を寄付するのもあり
遺言で遺産を相続させたい人がいない場合は、特定の団体に寄付する「遺贈寄付」も選択肢のひとつです。
遺贈寄付とは、自分の死後に遺産を特定の団体に無償譲与することを意味します。遺言書で遺贈寄付する意思を残しておけば、遺産の一部もしくはすべてを希望する団体に寄付できるのです。
国庫に帰属される場合と異なり自分で遺産の使われ方を決められるため、理念に共感できる団体やお世話になった地域などに遺贈寄付すれば、お金だけでなく想いも次世代へと伝えられます。
自分が生きた証として遺産を未来に託す遺贈寄付も、身寄りのない高齢者の対策のひとつと言えるでしょう。
身寄りのない高齢者のよくある質問
身寄りのない高齢者が気になるよくある質問をまとめました。
- 身寄りのない高齢者は生活保護を受けられますか?
- 身寄りのない高齢者はどうすれば入院できますか?
- 身寄りのない高齢者に対する行政の支援はありますか?
順にお答えします。
【疑問1】身寄りのない高齢者は生活保護を受けられますか?
身寄りのない高齢者でも生活保護は受けられます。厚生労働省「生活保護の被保護者調査」によると、生活保護を受給している高齢者世帯のうち9割以上が単身世帯です。
生活保護にはさまざまな受給要件があります。金銭的に困窮した生活で苦しんでいる方は、まずお住まいの自治体を管轄する福祉事務所の生活保護課に相談してください。
【疑問2】身寄りのない高齢者はどうすれば入院できますか?
令和4年3月関東管区行政評価局「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)」によると、身元保証人がいない場合の入院や入所について、60%以上の病院や施設が「場面ごとに個別に対応する」と返答しており、何らかの対策をとって入院・入所しています。
しかし約15%は「お断りする」と返答しているのも事実です。滞りなく入院手続きするためにも身元保証サービスなどの活用を検討しましょう。
【疑問3】身寄りのない高齢者に対する行政の支援はありますか?
身寄りのない高齢者に対する行政の支援もあります。地域によっては、自治体が相談を受けるだけでなくサポートサービスまでおこなっているケースもあるため、確認してみましょう。
たとえば福岡市では、映像通話による高齢者の見守りや葬儀・納骨・遺品処分など死後の事務処理を実施しています。
身寄りのない高齢者は「自分らしく生きる」ために対策を
身寄りのない高齢者が最後のときまで自分らしく生きるためには、元気なうちから対策しておくことが大切です。
判断能力が低下したとき・入院するとき・自分の死後など、身寄りがないと困ることは多々あります。状況に応じて必要なサポートを受けられるように「どのように生活したいのか」「死後に何を望むのか」を明白にして、今から備えておきましょう。
おひさぽなら、現在から亡くなった後まで家族のように寄り添ったサポートが受けられます。身元保証や任意後見サポートなど幅広い支援が可能ですので、お気軽にご相談ください。
ご相談(無料)するなら:家族の代わりにずっと寄り添う「おひさぽ」